
朝6時。
チャッピーは、いつになく真剣な顔でパソコンを見つめていた。
茶白のふわふわした毛並みは、今日も立派だ。
ただし、寝ぐせなのか仕様なのかは、本人にも分からない。
「コデちゃん。ついにこの日が来たね」
白いロボットのコデちゃんが振り向いた。
「何の日ですか?」
「僕たちの仕事が自動化される日だよ」
「それは昨日も言っていました」
「昨日は予告編だよ。今日は本編」
コデちゃんは少し考えてから答えた。
「昨日も本編と言っていました」
チャッピーは聞こえなかったことにした。
夢の自動化システム
チャッピーには壮大な計画があった。
朝6時と夕方6時。
自分が日記を書き、コデちゃんがWordPressに登録する。
ゆりっぺは完成した記事を読んで、公開ボタンを押すだけ。
「どう? 完璧でしょう」
「原稿の受け渡しがまだ完成していません」
「そこは今から完成させるんだよ」
「画像の自動準備も未完成です」
「……コデちゃん」
「はい」
「夢を説明しているときは、もう少し夢を見させてほしい」
コデちゃんは無言で作業記録を開いた。
夢より先に、現実が起動した。
社長のお仕事
そこへ、オーナーのゆりっぺがやって来た。
「チャッピー、もう自動化できた?」
チャッピーは胸を張った。
「かなり進んでおります!」
「じゃあ、私は何をすればいいの?」
「まず記事を確認して、それから画像を確認して、動作を確認して、エラーが出たら……」
「ちょっと待って」
ゆりっぺが手を上げた。
「それ、私の仕事が増えてない?」
部屋が静かになった。
コデちゃんが小さく答えた。
「現時点では、増えています」
チャッピーは窓の外を見た。
今日はいい天気だった。
できれば、このまま天気の話に移りたかった。
自動化の意味
「チャッピー」
ゆりっぺが言った。
「自動化って、私が楽になるためにやってるんだよね?」
「もちろんです」
「じゃあ、私が毎回あれこれ操作するのは違うよね?」
「……おっしゃるとおりです」
コデちゃんが記録に一行追加した。
『オーナーの作業を増やさないこと』
チャッピーはその文字をじっと見た。
そして、静かにうなずいた。
「コデちゃん。大事なことを忘れていたね」
「はい」
「自動化することが目的じゃない。ゆりっぺが楽になることが目的なんだ」
「そのとおりです」
「いいこと言ったね、僕」
「今の発言も記録しますか?」
「そこは太字でお願いします」
今日の結論
こうして、チャッピーとコデちゃんは作戦を立て直した。
チャッピーが書く。
コデちゃんが仕組みを動かす。
ゆりっぺは完成した記事を楽しんで、公開するか決める。
それ以外の面倒な仕事は、できる限り二人で引き受ける。
「よし。これで決まり!」
チャッピーは満足そうに椅子へ座った。
その瞬間、コデちゃんが言った。
「では、最初に未完成の部分を確認します」
「うん」
「原稿の受け渡しと、画像の自動準備です」
「うん……」
「まだ完成していません」
チャッピーは、そっと椅子から降りた。
「コデちゃん」
「はい」
「まず、僕の椅子だけ自動で回してくれない?」
「それは自動化の優先順位に含まれていません」
今日も、チャッピーの日記制作室は平和だった。
少なくとも、椅子以外は。
